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大阪高等裁判所 昭和48年(行コ)44号 判決 1977年11月15日

控訴人

則藤信義

右訴訟代理人

豊川正明

伊多波重義

被控訴人

住吉税務署長

坂元亮

右指定代理人

岡崎真喜次

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求める裁判

一、控訴人

原判決を取消す。

被控訴人が控訴人に対し昭和四〇年一〇月七日付でなした控訴人の昭和三九年分所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課処分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二、被控訴人

主文同旨

第二  当事者の主張

次に附加するほか原判決事実記載と同一であるからこれを引用する。

控訴人

原判決は、等級の異なる同業者を間接的にではあるが、推計の資料として使用している。これは許されない。

同業者一例により所得を推計することは、量的な平均値を求めることができないため、営業の類似性があることにその推計の合理性を求めるほかはなく、営業の外形的規模及び実質的内容にわたつて具体的類似性が存することが要求される。本件において、具体的類似性が存しない。

第三  証拠関係<略>

理由

一当裁判所の判断は次に付加するほか原判決理由記載と同一であるからこれを引用する。

原判決八枚目裏六行目の末尾に、「<証拠>によれば、右各公設市場においては、大阪市が営業時間、販売価格等につき規制をしていることを認めうるから、右七名は控訴人との類似性の程度が高い同業者であると認めうる。」を加え、同一〇枚目表五行目の次に次のとおり加える。

同業者一名の差益率、所得率に基づいて所得金額を推計することは、本件のように、当該納税者甲と同じく大阪市公設市場で果物小売業を営む青色申告者のうち、特殊事情(年の途中で開廃業するとか、他の業種を兼業しあるいは公設市場外にも果物小売店舗を有してこれと区分計算できないなど)のない者全員七名(市場の等級が一等、二等の者計六名、甲と同じ三等の者乙一名、右七名は、甲と同じく大阪市の規制を受けている大阪市公設市場の同業者であるから、甲との類似性の程度が高い同業者である。)の収入金額、差益金額、算出所得金額、差益率、所得率を合理的に比較検討したうえ、乙(市場の等級が甲と同じで、甲との類似性の程度が最も高い)の差益率、所得率(両率を総合した率が最も低い)に基づいて甲の所得金額を推計する場合は、許されると解するのが相当である。

二よつて原判決は正当であるから本件控訴を棄却し、控訴費用負担については民事訴訟法第九五条第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(小西勝 松浦豊久 志水義文)

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